座談会

自己紹介

伊藤

「本日は宜しくお願いします。お互い小さい子どもを育てながら仕事をしているという共通点もあり、本日は色々なお話ができればと思います。 私は、現在5歳になる娘がおり、当事務所で産休・育休を取得しました。私の場合は、出産の時期との兼ね合いもあり、約1年間の育休を取得してから時短勤務で復職しました。 安西先生も育休を取得したのですよね。」

安西

「はい。私は現在1歳の息子がおりますが、入所3年目の時に妻の出産に伴い2カ月の育休を取得しました。」

一日のスケジュール

安西

「伊藤先生の1日はどのようなスケジュールですか?」

伊藤

「朝は、夫が娘を保育園に送っていくので、私は洗濯や夕飯作りなど家事を済ませた後9時~9時30分頃に出勤し、帰りは私がお迎えに行くので17時には事務所を出て保育園に向かいます。子どもと18時頃に帰宅した後は、一緒に夕飯を食べ、その後は遊んだり、ピアノの練習をみたりして、合間に溜まっている家事をこなし、お風呂に入れて21時頃に寝かしつけるまで、バタバタとこなしています。」

安西

「帰宅後に自宅で業務をすることもありますか?」

伊藤

「その日に対応しなければならない業務があるときは、子どもが寝た後にテレワークで対応しています。 また、対面での会議がない日は、終日テレワークで対応することもあります。現在は、業務で使用する資料はデータ保存が基本とされており、また、リーガルテックが進みリサーチもパソコン上でできるものが増えたため、テレワークがしやすい環境が整ってきたと感じています。」

安西

「確かに、最近は事務所では様々なリサーチツールを導入しており、パソコン上で書籍や法律雑誌、裁判例等を確認できるのは非常に便利ですよね。」

伊藤

「安西先生の1日のスケジュールはいかがですか?」

安西

「子どもはまだ保育園等に通っていないので、「お迎えのため何時までには絶対に帰宅しなければならない」といった時間の制約はありませんが、できるだけ夕食の時間に間に合うように事務所を出るようにしています。帰宅後は、子どもの夕食、お風呂、寝かしつけを妻と分担して行い、その後自宅で業務を再開しています。家事・育児の分担の面もそうですが、単純に子どもが寝る前に一緒の時間を過ごしたいという理由も大きいです(笑)。もちろん、遅い時間に打合せがある場合や夕方に突発的な対応が発生した場合など、早い時間の帰宅が難しい日もありますが、そのような日が続くときにはできるだけ週末に子どもとの時間を確保するようにしています。」

伊藤

「弁護士に限らず、最近は安西先生のように主体的に家事・育児に関わる男性が増えていますよね。当事務所の他の女性弁護士の中にも、夫婦で半々に家事・育児を分担し出産前とあまり変わらないスタイルで仕事をしている人もおり、様々ですよね。 ところで、テレワークは活用していますか?」

安西

「私もテレワークを利用しています。裁判の期日やクライアントとの打合せ、事務所の蔵書で確認したい書籍があるとき等は事務所で仕事をしていますが、それ以外の場合はテレワークで勤務することもあります。」

伊藤

「当事務所では、年次や性別を問わず、テレワークを積極的に活用する弁護士もいれば、基本的には事務所に出てきている弁護士もおり、人それぞれですよね。」

安西

「そうですね。私も、ちょっとしたスキマ時間を家事・育児の対応等に充てられたり、移動時間がかからない点でテレワークは効率的であると感じていますが、他方で、モニターを通じてではなく対面でディスカッションすることで色々なアイデアが生まれることもありますし、大量の訴訟記録を細かく読み込むときには事務所で色々な資料を広げながら検討する方が便利ですので、業務の内容や状況等に応じて上手く使い分けができると良いのではないかと考えています。」

現在の働き方~両立の工夫

安西

「仕事との両立のために何か工夫していることはありますか?」

伊藤

「時間の管理をこれまでよりも綿密に行うようになりました。その日に使える時間には限りがあるため、依頼された業務は、すぐに内容を確認して自分の中でおおよその対応時間を見積もって、やるべき順に対応するようにしています。通勤中の電車の中で、その日の段取りを整理したり、作業の進め方を考えたりしています。 また、子どもが急に体調を崩して保育園にお迎えに行かなければならないこともありますので、常に明日仕事ができるかは分からない、という気持ちで、仕事はため込まないようにその日中にやるべきことを決めて取り組むように心がけています。」

安西

「業務に取り組む上で段取りを整理することは大切ですよね。私も事務所にある書籍を利用したリサーチ事項は日中(事務所にいる間)にまとめて横断的に行うなど、優先順位を付けて対応するようにしています。子どもが生まれる前と比較すると、仕事に費やすことができる時間に制約があることは確かです。他方で、育児をしていることを理由に仕事のクオリティが低下したり、業務のスピードが落ちたりすることは避けたいので、子どもが生まれる以前と比較して、これらの点はより意識して効率的に取り組むように心掛けています。」

当事務所の制度

安西

「当事務所は、育児を含めた多様な働き方に関する制度や福利厚生サービスなども充実していますよね?」

伊藤

「当事務所には、多様な働き方委員会という委員会があり、ライフステージの変化に応じた柔軟な働き方をサポートしています。出産・育児や介護、病気など各人の事情に応じ、例えば、時短勤務、週〇日勤務など時間を制限する働き方や、案件の配点にあたり一定の配慮を求めるなど希望する働き方を事務所と相談することが可能です。 また、事務所が加入している福利厚生サービスを利用すると、シッター費用の補助なども受けることができます。」

安西

「私が育休を取得した時も、多様な働き方委員会の先生と何度か面談をし、2ヶ月間の育休を取得しました。また、育休終了後にいきなり育休前と同じスタイルで働くことができるかが不安であったため、事務所と相談の上、業務復帰後1ヶ月の間は、案件配点配慮制度を利用して基本的にテレワークで勤務し、宿泊を伴う出張や遠方への外出等を伴う業務は避けるように配慮してもらいました。 結果として、徐々に仕事と育児を両立させることができ、円滑な業務復帰につながりました。 当事務所では、固定化した制度の中から選択するというものではなく、事務所と相談の上で自分のライフスタイルに合った働き方を構築することができ、とても有り難く感じています。」

男性弁護士と育休

伊藤

「最近は、所内で男性弁護士が育休を取得することも増えてきましたよね?」

安西

「そうですね。私が育休を取得した頃は、男性弁護士が育休制度を利用する例が現在と比べると多くありませんでしたので、直近で育休制度を利用した男性弁護士の先輩に相談していました。」

伊藤

「育休制度を利用することについて不安に感じることはありませんでしたか?」

安西

「先輩に育休の期間や育休中の過ごし方などについて相談をしていましたが、育休制度を利用すること自体については特に悩むことはありませんでした。当事務所では、パートナーを含む男性の先輩弁護士が育児に積極的に取り組みつつ、事務所の中心としてバリバリ働いている様子を間近で見ていたということもあり、特に不安に感じることはなかったのだと思います。」

伊藤

「実際に育休を取得してみてどうでしたか?」

安西

「予想以上に大変な毎日でしたね。私は出産後4ヶ月目から業務に完全に復帰していますが、育休を取得し、育児の大変さを身をもって経験できましたので、この大変さを妻一人に押し付けるわけにはいかないと感じるようになりました。」

育休後の多様な働き方

安西

「女性弁護士の皆さんは、育休後どのような働き方をされていますか?」

伊藤

「当事務所では、育休後に私のように事務所業務に復職する弁護士のほか、それぞれの弁護士が出向や留学など様々なキャリアを歩んでいます。 例えば、出産後にお子さんと一緒に留学している弁護士や、事業会社に出向する弁護士もおり、本人の希望に応じたキャリアを選択することが可能であると感じています。 復帰のタイミングも様々で、私のように1年程度育休を取得する弁護士もいれば、出産後すぐに復帰する弁護士もおり、その時期も各弁護士の意向が尊重されています。」

安西

「育休に限らずご家庭の事情で休職される弁護士もおり、多様な働き方という点に関してはとても理解のある事務所だと感じています。」

伊藤

「パートナーとしての立場から振り返ると、産休・育休の前後での案件・クライアントの引継ぎがとてもスムーズであったと感じています。当事務所では、理念の一つとして「事務所一丸」を掲げていますが、クライアントは、個々の弁護士のクライアントではなく事務所全体のクライアントであるという意識が根付いています。そのため、産休・育休で一時的に業務から離れる際には、他のメンバーがその業務を主体的にサポートすることが当たり前ですし、また、産休・育休を長く取得していると復帰後に仕事がなくなるのではないか等といった不安も全く感じませんでした。」

安西

「業務が個々の弁護士に紐づいていると、引継ぎ等の問題が生じますものね。私も他の弁護士が産休・育休を取得する際には、できるだけのサポートをするよう心掛けています。」

当事務所の雰囲気~子育てをして感じる当事務所の職場環境

安西

「子育てをして感じる当事務所の職場環境はいかがですか?」

伊藤

「当事務所は、性別問わず積極的に子育てに関与している弁護士が多いという印象です。子育て現役世代では、保育園の送迎や食事作りなど積極的に育児に関与している弁護士も少なくなく、そういう先輩弁護士が身近にいることにより、若手弁護士も仕事と育児の両立をしやすい雰囲気が自然と生まれているように感じています。事務所も、そのような風潮を否定せず、各種制度を用意して事務所全体として応援しているという姿勢を感じています。」

安西

「私のような若手の弁護士からしても、先輩弁護士が日常業務をこなしつつ、積極的に育児に関与しており、また、事務所としてもそういった弁護士の働き方に関して理解があるので、育休制度を利用しやすい環境にあると思います。 伊藤先生が制度を利用した当初から今のような雰囲気だったのですか?」

伊藤

「私が制度を利用して時短勤務をした当初、時間になって自分から帰りますとなかなか言いづらかったのですが、先輩弁護士や同僚の弁護士から、「帰らなくて大丈夫?」などと声をかけてもらい、夕方に帰りやすい雰囲気を作っていただいたのがとても有り難かったことを覚えています。それは今も変わらず続いており、いつも一定の配慮をしていただいていることはとても有り難い環境です。」

弁護士を目指す皆さんへ~将来を見すえて

伊藤

「当事務所では多様な働き方委員会で各自の事情に合わせた働き方を事務所と相談しながら決めることができますが、実際に制限のある働き方をしたことによって肩身の狭い思いをしたり、居場所がなくなるということはありません。人によって環境は異なると思いますが、仕事と育児の両立は数年続くものですので、皆さんには、ぜひ若手の時代だけでなく、10年後・20年後のご自身のキャリアを想像しながら事務所を選択していただければと思います。」

安西

「育休を取得するか含めライフワークバランスをどのように設定するかは人それぞれであり、また、ライフステージによって変わり得るものですので、実際に様々な制度を利用するかは別として、制度として充実していることや周囲の弁護士の理解があることに越したことはないと思います。そのような環境にあるからこそ、各弁護士ともに安心して日常業務を通じて研鑽を積むことができ、成長機会につながっていくのではないかと思います。当事務所では、各弁護士のライフスタイルに応じたに働き方が実現でき、私自身も、個々人の意思を尊重するという当事務所の環境に非常に満足しています。」